
この本について
ふだんは普通に仕事して、人とも関わって、それなりに毎日を回しているはずなのに、ふとした瞬間に「なんでこんなにしんどいんだろう」と立ち止まってしまうことがあります。周りにはうまくやれているように見える人もいるのに、自分だけが溺れそうな気持ちを抱えているような、あの感じです。わたし自身、そういうタイミングで自分の弱さをどう扱えばいいのか分からなくなることがあります。 宮地尚子さんの『傷を愛せるか』は、そのしんどさにすぐ答えをくれる本ではありません。でも、変化のタイミングで人が脆くなることや、子ども時代に“ただ見ているしかなかった無力さ”が今の自分に残っていること、あるいは「なんでできないの?」と感じてしまう他者との距離感などを、ていねいに拾い上げてくれます。自分がなぜ苦しいのかを直線的に説明するのではなく、「もしかしたら、こういうところに傷があったのかもしれない」と静かに視点をずらしてくれる感じです。 特に、溺れそうな人にいくら言葉を投げても届かないという話は、誰かに寄り添うときだけでなく、自分自身に向けての態度としてもじんわり効きます。すぐに変わらなくていいし、変わるときにはいったん閉じてもいい。そう思えるだけで、少し呼吸がしやすくなる。本書は、そんな余白をつくってくれます。 自分の弱さとどう折り合いをつければいいのか分からずに悩んでいる人に、とても静かに届く本だと思います。
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出版社による紹介
たとえ癒しがたい哀しみを抱えていても、傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷の周りをそっとなぞること。過去の傷から逃れられないとしても、好奇の目からは隠し、それでも恥じずに、傷とともにその後を生きつづけること―。バリ島の寺院で、ブエノスアイレスの郊外で、冬の金沢で。旅のなかで思索をめぐらせた、トラウマ研究の第一人者による深く沁みとおるエッセイ。
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