
感覚史入門 なぜプラスチックを「清潔」に感じるのか (平凡社新書 1096)
久野愛
平凡社 / 2025-12-17
この本について
日々生活している中で、「なんで自分はこれを当たり前だと思っているんだろう」と急に立ち止まる瞬間ってありませんか。例えば、明るい部屋のほうが安心するとか、プラスチック容器を“清潔”だと感じるとか。理由は説明しづらいのに、身体がそう判断してしまう。でもその基準って、本当に自分だけのものなんでしょうか。 『感覚史入門』を読むと、その「当たり前」はけっこう揺らぎます。谷崎潤一郎が電灯ではなくロウソクの薄明かりに魅力を感じた話や、ガス灯によって夜が一気に社交の時間へ変わった歴史が紹介されるのですが、そこで描かれているのは単なる照明の変化ではなく、人々の“世界の感じ方”そのものの更新なんですよね。私たちが清潔・危険・心地よいと判断する基準も、時代や技術と一緒に書き換えられてきたのだと気づかされます。 さらに面白かったのは、VRの章で語られる「身体の再編成」という視点です。ヘッドセットをつけて仮想空間に没入するとき、私たちはただ別世界を体験しているのではなく、感覚そのものの構造が組み替わっている。調香師の訓練の例もそうですが、身体はいつも環境との関係の中でつくり直されている、という考え方が腑に落ちました。自分の“感じ方”が固定されたものではないと思えると、世界の見え方が少し軽くなります。 自分の感覚の由来やズレにモヤモヤしている人、あるいは「どうして自分はこう感じるのか」を丁寧に知りたい人には、とても静かに響く一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの54%が集中しています。
読書の順序
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