
教科書では教えてくれない日本の名作 (SB新書)
出口 汪
SBクリエイティブ / 2009-12-15
この本について
「なんでこんなに不安定なんだろう」とか「自分の立ち位置がよく分からないまま毎日が進んでいく感じがする」とか、そんなモヤモヤを抱えることが僕はけっこうあります。仕事の変化も早いし、価値観も揺れ続けていて、気づいたら自分の欲望なのか、周りに合わせた反応なのかも判別できなくなっていたりします。 この本を読んでいて思ったのは、今の私たちの混乱って、実は明治以降の日本が経験した“揺れ”と地続きなんだ、という感覚でした。例えば、孤独の正体が個人の弱さではなく「時代が急に変わってしまったことで方向感覚を失う」という構造的なものだったり、欲望が膨らみ続ける背景には、生産主義と結びついた近代の仕組みそのものがあることだったり。そういう視点を知るだけで、自分の悩みを「時代の中の悩み」として捉え直せるのは、けっこう救いになります。 もう一つよかったのは、文学作品が当時の人びとの葛藤とどうつながっていたのかが、生活レベルのリアルさで語られているところです。太宰の苦しさも、漱石の吐く血のような孤独も、「作品のテーマ」ではなく、その時代の人間が背負わされていた圧力の結果として見えてくる。すると、古典が急に「昔話」じゃなくなるんですよね。 作品そのものを楽しみたい人より、「自分が抱えてる感覚の背景を知りたい人」に刺さる本だと思います。今の閉塞感を、少し違う角度で見直したいときの一冊でした。
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