
ものぐさ精神分析 岸田秀コレクション
岸田秀
この本について
人と話しているとき、自分が出している顔と、本音のあいだに微妙なズレを感じることってありませんか。相手に合わせすぎて疲れるとか、逆に自分の中の黒い感情だけ妙に強まっていくとか。「このまま外の自分と内の自分が別物になってしまうんじゃないか」とうっすら不安になるあの感じ。僕自身、仕事でも人間関係でも、この内外のギャップに振り回され続けてきました。 岸田秀の『ものぐさ精神分析』は、そのモヤモヤを「個人の問題」としてではなく、もっと大きな、集団や歴史のレベルの話として見せてくれる本です。読んでいて助かったのは、自分の中の分裂めいた感覚が、必ずしも自分固有の欠陥ではなく、社会の側にある歪みと地続きだと示してくれるところです。たとえば、外的自己と内的自己のズレが深まっていくプロセスや、抑え込んだ欲望を別の形で満たそうとする動きは、個人を責めるというより「こういう仕組みで起きる」と淡々と描かれている。だから読んでいて変に追い詰められないし、逆に自分の行動を冷静に見る余裕が生まれます。 もうひとつ、この本が効くのは、自分の「なぜか繰り返すパターン」を見つめる視点を与えてくれるところです。たとえば、何度も同じ人に傷つけられる関係から抜けられない理由を、単なる性格の弱さではなく、「認めがたい事実を避けているから」と説明するくだりは正直きついけれど、妙に腑に落ちます。痛いけれど、逃げ癖を責めるのではなく、構造として理解させてくれるところがありがたい。 表面的な前向きさよりも、「自分の内面のねじれを真面目に見たい人」には刺さる本です。自分の違和感の根っこを、個人でも社会でもなく、その両方の交点で考えたいときに丁寧に効いてきます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの48%が集中しています。
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