
この本について
仕事でも人間関係でも、「自分でもよくわからない衝動に振り回される瞬間」ってありますよね。普段は理性的に動いているつもりでも、ふとした拍子に心の底のざわつきが顔を出す。そんな自分に後から驚くようなとき、どう向き合えばいいのか分からなくなることがあります。 『鬼平犯科帳(十)』の抜粋を読んでいて、多くの人が保存していたのは、まさにその“自分でも制御しきれない心の奥”と、そこに向き合う人間の弱さや可笑しみでした。平蔵が「自分だって道を外れるかもしれない」と語る場面は、強い立場の人でも揺れることがあるという、妙な安心感をくれますし、木村忠吾の髷をばっさり切り落としてしまう騒動には、理屈よりも勢いで事が転がっていく“どうしようもない人間らしさ”が出ています。完璧じゃない登場人物たちの姿を見ていると、自分の迷いもどこか許せるようになるんですよね。 この巻が効いてくるのは、立派さより「揺れながらも前に進む人間」を見たいときです。心の奥にある得体の知れない部分をそのまま抱えながら、それでも目の前の役目を果たしていく。そんな姿が淡々と描かれていて、読んだあとに少しだけ肩の力が抜けます。 迷いを抱えたまま働いている人、つい自分を責めてしまう人に刺さる一冊だと思います。
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