
楊令伝 十五 天穹の章 (集英社文庫)
北方謙三
集英社 / 2012-08-26
この本について
仕事でも人生でも、「正しいはずなのに、どこか踏ん切れない」と感じる時があります。周りから期待されていたり、役割が固まっていたり、もう後戻りできないところまで来てしまったような気がして、自分の本音を置き去りにしてしまう。今回の抜粋を読んでいると、そんな“揺れ”の中にいる人の気持ちに、ずっと寄り添ってくるんですよね。 この巻で印象的なのは、強いと思われている武将たちですら、臆病さや迷いを抱えたまま歩いていることが、はっきり描かれているところです。踏ん切りのつかない脚を抱えて、それでも前に出ようとする人。誇りを失いかけながらも、誰かとの対話で立ち直ろうとする人。あるいは、忠義や復讐に縛られすぎて、自分でも処理しきれない感情に押し潰されていく人。それぞれの揺れがあまりに人間的で、「迷っているのは自分だけじゃない」と素直に思えてくるんです。 もう一つ感じたのは、勝ち負けよりも、「どう生きたか」を静かに問われるような場面が多いことでした。たとえば、庇うように動いてしまう秦容の一瞬の揺らぎや、光だけをたよりに進もうとする花飛麟との会話。決して大げさではないのに、人の心がどう動くのかが伝わってきて、自分の中の小さな選択にも目を向けたくなる。物語なのに、現実の自分に返ってくる瞬間が多い巻でした。 強がりをやめたくてもやめられない人、役割の重さに押されて本音を隠してしまう人、そんな方にしみる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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