
鬼の話
折口 信夫
双葉社
この本について
仕事でも日常でも、自分の中に説明しづらい「ざわつき」みたいなものが出てくることがあって、理由が分からないまま抱え続けてしまうことがあります。論理では整理しきれない感じというか、もっと手前のところにある感覚をどう扱えばいいのか分からないまま過ごしてしまう。でも、ああいう曖昧さって、意外と昔の人の方が丁寧に向き合っていたんだな、と気づかせてくれたのが『鬼の話』でした。 この本の面白さは、「神・鬼・たま・もの」という分類に、当時の人の世界の見え方がそのまま残っているところです。たとえば、たまが“丸くて、目に見えて、光るもの”として扱われていたと知ると、現代の抽象的な“魂”のイメージとはまったく違う理解の仕方があったことに気づきます。鬼や神も、いまのようにキャラクター化される以前は、もっと生々しく恐れられる存在だった。こういう視点を知るだけで、日常の「得体の知れない不安」を仕分けるヒントになるというか、感じ方の選択肢が増える感覚がありました。 また、神が朝廷から“位”を授かっていく歴史や、常世神のような古い信仰の痕跡に触れると、自分たちが当たり前と思っている世界観も、ずっと変化し続けた結果にすぎないんだなと気が楽になります。「怖さ」や「曖昧さ」とどう距離を取るかは、本当はもっと自由でよかったんだと。 昔の人の感覚を知ることで、自分のモヤモヤに別の名前を与えたい人に向いている一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
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