
金田一耕助ファイル12 悪魔の手毬唄<金田一耕助ファイル> (角川文庫)
横溝 正史
累計読者数4
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star総合評価 33/100
start序盤集中型
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この本について
最近、昔の自分の気持ちや土地の空気みたいなものが、だんだん輪郭を失っていく感覚があります。忙しくしていると特にそうで、「あれ、あの頃ってどんな景色を見てたっけ」と思い返しても、思い出がうまく掴めないまま流れていく。そんなとき、物語の中の“時間の重なり”に触れると、なぜか自分の記憶まで少しだけ輪郭が戻ることがあります。 『悪魔の手毬唄』を読んで刺さったのは、事件そのものよりも、昭和三十年前後の村の光景や、人々の年齢、暮らしぶりがやたら具体的に書かれているところでした。誰が何歳で、どんな家に住み、どんな距離を歩いて峠を越えていたのか。そういう細部が積み重なるほど、登場人物たちが“生きてきた時間”が見えてきて、こっちまで自分の歩いてきた道を思い返したくなるんです。特に、金田一がくたびれた白絣のまま人力車で峠を越えるシーンは、「人生のどこかで自分も同じように、くたびれた姿のまま大事な場所に向かったことがあるよな」と妙に沁みました。 物語としてはもちろん名作ですが、それ以上に「人の暮らしの跡」を手触りごと残してくれる小説だと思います。時間に置いていかれている気がする人、あるいは“自分がどこから来たのか”をふと確かめたくなる人には、静かに効いてくる一冊です。
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