
江戸川乱歩傑作選(新潮文庫)
江戸川乱歩
新潮社 / 1960-12-24
この本について
仕事でも日常でも、「なんでこんなに状況が読めないんだろう」とか、「自分の中の想像だけがどんどん膨らんで、現実との距離がつかめない」というモヤモヤが続く日があります。頭の中ではいろんな可能性を組み立てているのに、実際の行動はどこか宙ぶらりんで、落ち着かないまま時間だけが進んでいく感じです。 江戸川乱歩の短編を読んでいて改めて思ったのは、人の想像ってこんなにも暴れ回るのかということです。場末の下宿でゴロゴロしながら空想ばかりしていた男たちの描写や、賃金計算の部屋がふと無人になってしまう偶然のズレ。そこから事件が転がりはじめる流れを追っていると、普段「考えすぎだよな」と自分に言い聞かせていた部分が、逆に鮮やかに輪郭を持って立ち上がってきます。自分の中でぼやけていた感覚が、「ああ、こういうふうに事実と想像が混ざる瞬間ってあるよな」と腑に落ちていくんです。 乱歩の魅力って、恐怖とか怪異そのものよりも、登場人物の“世界の見え方”がゆっくり歪んでいく瞬間にある気がします。美しさに取り憑かれた兄の運命や、誰かの影を追いかけ続ける語り手の迷走を読んでいると、日常で抱える行き場のない不安や妄想めいた気配が、少しだけ安心して眺められるようになる。現実逃避というより、自分の中にある暗がりと距離を取る練習に近い読書体験です。 自分の内側がざわつく時期ほど、この本はじわっと効きます。想像の暴走に付き合いながらも、現実に戻るための取っ手をそっと残してくれるような感覚があるので、物語の不穏さが逆に落ち着きをくれるんですよね。「つい考えすぎてしまう人」に特に届くと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
読書の順序
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