
入門 哲学としての仏教 (講談社現代新書)
竹村牧男
講談社 / 2009-04-20
この本について
なんとなく「揺れてる自分」をどう扱えばいいのか分からないまま、人と比べては疲れ、昨日の自分と今日の自分の違いにも落ち着かなくなる時があります。変わらない軸を持てと言われても、そもそも自分の中に変わらない部分なんてあるのか…と考え出すと、かえって不安になることもありますよね。 この本は、そういうモヤモヤに対して「変わらない自分を探さなくていい」というところから話を始めてくれます。仏教がいう“無我”は、自分を消すことではなく、無意識に握りしめている「常に同じで主体的な自分」というイメージを一度外してみよう、という提案なんだと分かります。物も心も現象として同列に見ていく視点や、五感が受け取っているもの以外はじつは“物”としては存在しないという説明は、自分の感じ方が揺れるのは当然だと納得させてくれます。世界は関係で成り立っているから、自分もまた関係のなかで立ち上がってくる存在なんだ、と静かに腑に落ちていきます。 読んでいていちばん効いたのは、「今ここに生きている変化しつづける自己は否定されていない」というところでした。変わらない軸を必死に作ろうとして苦しくなるより、移り変わる自分をそのまま前提にしてみるほうが、むしろ足が地につく感覚があります。自分とは何かを一気に決めようとせず、じわじわと輪郭が変わっていくものとして扱う。その視点の変化だけで、比較のクセが少しゆるむ気がします。 「自分探しに疲れたけれど、自分を放棄したいわけでもない人」にとって、静かに効いてくる一冊だと思います。
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