
フリクリ 1 (角川スニーカー文庫)
榎戸 洋司、GAINAX
角川書店 / 2000-06-01
この本について
最近、目の前ではそれなりに色々起きているはずなのに、自分の中では何も変わっていない気がして「結局、すごいことなんて起きないよな」と思ってしまうことがあります。仕事でも人生でも、刺激はあるはずなのに、なぜか〝経験〟として残らないあの感じです。 『フリクリ 1』を読み返していて、抜粋の「すごいことが起きても、それはただ目の前で起こっているだけだった」というナオ太の独白に妙に心当たりがありました。周りは勝手に騒がしくなるし、自分の頭からもロボットが飛び出すくらいの非日常が起きているのに、それでも気持ちが追いつかない。あの距離感は、たぶん大人になってからもずっと残り続けるものなんだと思います。 この本が効くのは、無理に前向きになれとか、成長しろとか言わないところで、むしろ「気持ちが追いつかないままでも生きていい」という感覚を丁寧に描いてくれる点です。例えば、泣きじゃくるマミ美の頭をカンチがそっとなでるシーン。理解されないまま暴れていた感情が、不意に誰かに受け止められる瞬間って、本当は派手な出来事より心に残ります。また、ナオ太が「兄の代用品でもいいからそばにいたい」と思う場面も、未成熟な気持ちのまま誰かを大切にしようとする等身大の揺れがリアルで、背伸びしなくていいんだと感じさせてくれます。 派手なSFの皮をかぶってるのに、中身は「自分の感情に追いつけない人」の物語です。何かが変わりそうで変わらない日々に立ち止まっている人に、静かに刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの42%が集中しています。
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