
彼女と彼女の猫
新海 誠 and 永川 成基
講談社 / 2016-08-23
この本について
忙しい毎日のなかで、人との距離感に悩んだり、自分の生活リズムがちょっと乱れるだけで気持ちまで落ち込んだりすること、けっこうありますよね。誰かの言葉に振り回されて、本当に聞きたいことだけがいつも言えずに、人工衛星みたいに周りを回ってしまう感じも、分かる人には分かりすぎると思います。 『彼女と彼女の猫』は、そんな揺れやすい心の動きを、猫という静かな視点を通してゆっくり照らしてくれる作品です。猫は縄張りに一匹だけ。でも人間は同じ空間に何人もいて、優しいようでいて、実はその中で居場所を握るのは自分自身だけ。この “見せかけのやさしさ” に気づく場面が、読者の胸に刺さっているのだと思います。だからこそ、規則正しい生活を自分で整えることの安心感が、物語の中でしっかり説得力を持つんですよね。「コントロールできるものがある」というだけで、心が少し穏やかになる感覚が素直に描かれています。 また、人との会話で相槌だけ返してしまう主人公の姿は、頑張って距離を取ろうとしているのに、どこか自堕落にも見える複雑さを含んでいて、その揺れがすごくリアルです。毅然としていたいけれど、裂帛の気合いなんて日常ではなかなか出せない。そんな“弱さごと抱えて生きている人間”の姿を、猫という静かな存在がそっと受け止めてくれる。 人間関係に疲れやすい人、暮らしのリズムが乱れると心まで不安定になる人には、きっとやさしく効く物語だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの29%が集中しています。
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