
標高8000メートルを生き抜く 登山の哲学 (NHK出版新書)
竹内 洋岳
NHK出版 / 2013-05-10
この本について
仕事でも趣味でも、判断の場面が続くと「これでいいのか」と足が止まることがありますよね。特に、自分の選択に迷いが残ったままだと、前に進んでいるのにどこか不安がつきまとう。本書を読んでまず感じたのは、その迷いの正体が“情報の不足”というより、“想像しきれていないこと”に近いという視点でした。 著者は、標高八千メートルという極限で生きるために、成功だけでなく失敗や弱さまで全部テーブルに広げて考えると言います。経験を積み重ねるのではなく、並べて眺め直す。その上で、うまくいかなかった場合まで想像しておく。こういう姿勢は、仕事の計画やキャリアの選択でもそのまま効きます。行くか戻るかを自分の意思で決めたら、そこに迷いを残さないという考え方にも、救われるような感覚がありました。 もう一つ印象的だったのは、「弱い人に合わせると全体が弱くなる」という言葉です。山の話ではあるのですが、チームのスピードや質に悩む社会人なら、少なからず思い当たるところがあるはず。強い人が道をつくり、その後を仲間が通れるようにする。仕事でも企画でも、この順番が逆だと全員が疲れてしまうんですよね。 それから、登山にはルールも審判もないからこそ、自分で基準をつくる必要があるという話も刺さりました。他者から管理されると危険察知の感覚が鈍ってしまう、という指摘も含めて、自分の判断力をどこまで信じるかを考え直すきっかけになります。 自分の選択に責任を持ちたい人、あるいは“想像する力”が足りていないかもしれないと感じている人に、とても静かに効く一冊です。
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