
肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)
ラディゲ and 中条 省平
グーテンベルク21 / 1977-01-01
この本について
人を好きになると、自分でも説明できない感情が勝手に暴れ出して、あとから「なんであんなこと言ったんだろう…」と頭を抱えることってありますよね。大人になっても、嫉妬や独占欲や臆病さみたいな感情は、思ったより整理がつかないまま残っていたりします。 『肉体の悪魔』を読んでいると、その混乱した気持ちの正体が少しだけ輪郭を持つ感覚がありました。主人公の少年が、愛と呼ぶには未熟で、でも当人にとっては全身を支配するような情念に呑まれていく。その中で自分の醜さも怖さも全部さらけ出してしまう姿に、読者はなぜか目を離せなくなるのだと思います。例えば、海水浴を禁じる場面の身勝手さや、戦争が「自分の代わりに犯罪を犯してくれる」ことを期待する心の黒さなんて、本来は見たくないはずなのに、どこか自分にも覚えがある気がしてしまう。そこにザワっとしながらも、目が止まるんだと思います。 この小説が効くのは、恋愛を美しいものとしてだけ扱わず、人の心のぐちゃぐちゃした部分まで連れていってくれるところです。愛の裏側にある嫉妬や見栄や虚勢が、どれだけ日常の選択をねじ曲げてしまうのか。逆に、そういう未熟さを抱えたままでも人は進んでしまうのか。読みながら、自分の中の説明しきれない感情に少しだけ言葉が生まれる感覚があります。 「恋愛のきれいごとだけでは説明がつかない経験をしてきた人」には、とくに刺さる本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
読書の順序
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