
灯台へ(新潮文庫)
ヴァージニア・ウルフ and 鴻巣友季子
新潮社 / 2024-09-30
この本について
人と関わるたびに、相手の機嫌に振り回されたり、自分の行動の裏にある「本音」が読めなくなったりすることってありませんか。誰かを助けたいと思いながら、その気持ちが虚栄なのか慈愛なのか判然としない瞬間もあるし、家族に向ける感情だって、尊敬と苛立ちが同居してしまうことがある。日常って、そういう細かな揺れの積み重ねでできているように思います。 『灯台へ』の抜粋を見ていると、読者が刺さった場所はまさにその「揺れ」でした。自分の善意がどこまで本物なのか疑う場面、家族への愛情が急に遠のく瞬間、子どもの心がこちらの一言で決定的に傾いてしまう怖さ。ウルフはそれを大げさにせず、ほんの数秒の心の動きをそのまま置いていく。読んでいる側は、そこに自分の日常の影を見つけてしまうのだと思います。人間同士の違いに気づいて落ち込むときでも、「充分じゃないの。本当に充分ですよ」という一文が、余計な気負いをほどくように働いてくれたりします。 この本は問題を解決してくれるというより、モヤモヤがどう生まれ、どう流れていくのかをそっと見せてくれます。相手も、そして自分も、こんなふうに脈絡なく揺れているのだと思えるだけで、関係の扱い方が少し変わる。人を助けたい気持ちも、誰かに苛立つ気持ちも、どこかで同じ根を持っているのかもしれないと落ち着いて受け止められるようになる。そんな読み心地の作品です。 とくに、人間関係の「理由のない波」に疲れやすい人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの34%が集中しています。
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