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砂の女(新潮文庫)

砂の女(新潮文庫)

安部公房

新潮社 / 1981-02-27

累計読者数5
平均ハイライト数 7.6件/人
推定読了時間 約2時間54分
star総合評価 60/100
trending_up後半加速型
check_circle推定完走率 86%

この本について

最近、「このまま働いて暮らしていって、本当に何になるんだろう」とか、「今の生活よりましな選択肢がある気がするのに、どれを選んでも納得できない」という感覚を抱えている人、多い気がします。自分もそうで、理由は説明しにくいのに、なにかがずっと胸につかえている。そんなときに読み返したのが『砂の女』でした。 この小説は、答えをくれるというより、こちらが握りしめていた前提そのものをほどいてくれる感じがあります。たとえば「労働を越える道は、労働を通じて以外にはない」という一節。努力しろという話ではなく、避けようとするとかえって出口が見えなくなる、あの嫌な感覚の正体を言い当てられたようでした。また「このまま暮らして、それで何になるのかが一番たまらない」という嘆きに対しても、どの選択肢だって分かりっこないという、痛いほど正直な視点が差し込まれる。そこに、焦りを一度横に置ける余白が生まれます。 さらに、孤独を「幻を求めて満たされない渇き」と言い切る場面は、誰かに分かってほしいのに説明できないあの感覚を、外側から照らされるようでした。状況はぜんぜん違うのに、なぜか自分の生活の手触りが少し変わる。反復が重荷ではなく、現実を確かに手でつかませてくれるものに見えてくる。その変化が静かに効いてきます。 日々の生活に理由を求めすぎて疲れている人、あるいは「納得のいく人生」を探すほど遠ざかっている気がする人に、じんわり刺さる一冊だと思います。

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書籍情報(出版社紹介・目次)expand_more

出版社による紹介

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(解説・ドナルド・キーン)
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