
仏教の思想 4 認識と超越<唯識> (角川ソフィア文庫)
上山 春平 and 服部 正明
角川書店 / 1997
この本について
最近、物事の見え方そのものに疲れることがあります。相手の意図を読み違えたり、自分の感情に振り回されたり、同じ出来事でも日によって意味が変わって見えたり。原因は外側にあると思いがちですが、「そもそも自分の認識ってどう成り立っているんだろう」と立ち止まると、少しだけ風が通る感覚があります。 『唯識』は、その認識の根っこをとことん掘り下げる思想で、この本を読んで感じたのは「自分の見ている世界は、けっこう自分の心のクセに左右されている」という当たり前だけど避けてきた事実でした。たとえば、外界の対象そのものを認識していると思い込んでいたけれど、実は心の中の表象にすぎないこと。あるいは、過去の経験がアーラヤ識に沈殿して、気づかないうちに“自我”を作り続けていること。こういう視点を持つだけで、人間関係で過剰に反応してしまうとき、「これは相手じゃなくて、昔からの自分の型が動いてるだけかもしれない」と一呼吸置けるようになります。 そしてこの本の面白いところは、認識のしくみを暴いて終わりではなく、「じゃあそのクセはどうやって和らいでいくのか」まで淡々と示してくれるところです。認識は中性的なものではなく、常にどこか濁っているという指摘は厳しいけれど、だからこそ“完璧に分かろうとしない”姿勢が楽になる瞬間もありました。 自分の反応パターンに振り回されやすい人、あるいは「世界の見え方を一度リセットしたい」と感じている人には、静かに効いてくる一冊だと思います。
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