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この世をば(下)

この世をば(下)

永井路子

累計読者数3
平均ハイライト数 5.3件/人
star総合評価 41/100
boltライト読書型

この本について

仕事でも人間関係でも、「続けてきたのに、ある日ふっと諦めてしまう瞬間」がありますよね。自分でも理由がうまく言えなくて、気づけば流れに押されていたり、誰かの意向を気にしすぎたり。そのたびに、自分はどう動けばよかったんだろう、と後からじわじわ考えてしまうことがあります。 『この世をば(下)』を読んでいて、まさにその揺れに触れられた気がしました。抜粋にもありますが、道長はずっと「周りの空気を読みながら動いてきた末っ子」で、強引に奪うタイプでもない。けれど、ある政治的な場面で、やるときはきちんと姿勢を示しつつ、相手の気持ちには配慮する、という当たり前のようで実は難しいバランスを体得していくんです。これは現代でも同じで、自分を押し殺すか、相手を押し切るかの二択しかないように感じてしまうときに、もう少し丁寧なやり方があることを思い出させてくれます。 また、天皇からの縁談を断れない場面や、女房たちの衣装に押されて簾が膨らむ光景など、「自分ではどうしようもない外側の力」に押される瞬間も描かれています。そこで道長がどう受け止めるかを追っていると、歴史物というより、他人の期待や立場に囲まれた人間がどう動くかを静かに観察しているような読み心地がありました。 周囲を気にしすぎて動けない人、あるいは逆に強く出るしか方法を知らない人に刺さる一冊です。自分の癖をそのまま抱えたまま、もう少しだけいい選択をする余地が見えてくる物語でした。

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