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小さいおうち

小さいおうち

中島 京子

文藝春秋 / 2012-12-10

累計読者数4
平均ハイライト数 9.8件/人
推定読了時間 約4時間2分
star総合評価 62/100
trending_up後半加速型
check_circle推定完走率 90%

この本について

最近、「自分の判断に自信が持てない」とか、「周りの空気に流されてしまう」という相談をよくもらいます。正しいと思うことより、その場をどう切り抜けるかで精一杯になってしまう感じ、けっこう多いですよね。僕自身も、つい“とりあえず今日を乗り切る”ほうに寄ってしまうことがあります。 『小さいおうち』を読むと、その感覚が少し整理されます。戦時下という極端な状況なのに、登場人物たちは私たちとあまり変わらず、迷ったり、ごまかしたり、空気を読んだりしながら暮らしています。たとえば「何も言われなくても火にくべる判断をする女中」の話は、仕事の現場でどこまで踏み込むべきか迷う気持ちに重なりますし、「強い口調のものが人を圧迫していく」描写は、いまの社会の息苦しさにもつながってきます。誰かの決めつけではなく、日々の選択の積み重ねが空気を作っていくんだと気づかされるんです。 もう一つ、この本が quietly 効いてくるのは、“個人の気持ちは意外と簡単には戻らない”という視点です。手紙を開いたあの日から何かがずれていったと語られる場面を読むと、人と人の関係はドラマチックな事件より、ちょっとしたほころびで変わっていくんだよな、と妙に実感します。「始まったものはいつか終わる」という淡々とした言葉の裏にある、時間の流れ方も印象に残ります。 華やかな物語ではないけれど、日常の判断や人との距離感で悩んでいる人にはじんわり効く一冊です。特に「空気に押されやすい自覚がある人」にはよく刺さると思います。

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書籍情報(出版社紹介・目次)expand_more

出版社による紹介

昭和6年、若く美しい時子奥様との出会いが長年の奉公のなかでも特に忘れがたい日々の始まりだった。女中という職業に誇りをもち、思い出をノートに綴る老女、タキ。モダンな風物や戦争に向かう世相をよそに続く穏やかな家庭生活、そこに秘められた奥様の切ない恋。そして物語は意外な形で現代へと継がれ……。最終章で浮かび上がるタキの秘密の想いに胸を熱くせずにおれない、上質の恋愛小説。第143回直木賞受賞作。山田洋次監督で映画化。
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