
この世をば(上)
永井路子
ゴマブックス株式会社 / 2014-06-19
この本について
仕事でも人間関係でも、相手の腹の内が読めないまま場に巻き込まれていく感じってありますよね。こちらは静かに過ごしたいだけなのに、気づけば誰かの思惑に引っぱられている。自分は何もしていないのに、空気だけが妙にざわつく。そんなときに「今ここで何が起きているんだろう」と立ち止まりたくなる瞬間があります。 『この世をば(上)』を読んでいて、保存されていた抜粋が刺さる理由もまさにそのあたりだと思います。東三条院のように、前例のない存在がスッと現れて場の流れが変わる瞬間。道隆の勝手な振る舞いに、まわりが「またか…」と息をのみながらも従わざるを得ない息苦しさ。そして道長が、高松邸にいることを姉にあっさり見抜かれるあの場面。あれって、権力の大きさとか歴史的事件の話というより、人の勘や関係性の機微があまりにも生々しくて、現代の私たちでも「ああ、こういうのあるよね」と思ってしまうんですよね。 この物語が効くのは、華やかな平安貴族の物語だからではなく、人が思い通りにならない関係の中でどう立ち回るか、そのリアルな感触が描かれているからだと思います。状況の読めなさにモヤモヤしているとき、登場人物たちの判断が「自分ならどうする?」と自然に考えさせてくれる。もうひとつは、歴史上の“大きな名前”でさえ、実際には細かな気配の読み合いで動いていたことが伝わってきて、今の自分の悩みが少し地に足のついたものとして整理されるところです。 「人の機嫌や空気に振り回されがちな人」に、静かに刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの75%が集中しています。
読書の順序
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