
株価暴落
池井戸 潤
文藝春秋 / 2007-03-10
この本について
仕事をしていると、数字の悪化や取引先のトラブルを前に、どこまで踏み込んで助けるべきか、あるいは距離を取るべきか…そんな線引きでモヤッとすることがあると思います。感情だけでは判断できないし、でも割り切るだけでは気持ちが置き去りになる。私自身もその揺れの中で働いていて、この小説を読んだときに、現場で起きている“冷たさに見える合理”の裏を少し理解できた感覚がありました。 読者が抜き出している部分を見ると、刺さっているのは「お金や組織の理屈に人がどう巻き込まれていくか」というところだと思います。株価が落ちた瞬間に紙扱いされるように、企業も人も数字で語られると一気に立場が変わる。銀行が“病院”として企業を“入院患者”と呼ぶ描写も、やや過剰に見えるけれど、実務の感覚としては確かにある距離感で、そのリアルさが胸に残ります。 この本が効くのは、まず「組織がどう動くか」を物語として追体験できる点です。正義とか悪とかではなく、各部署が自分たちの役割に忠実に動いた結果、誰がどう立場を変えざるを得ないのかが静かに見えてきます。もう一つは、自分の仕事で何にモヤモヤしていたのか、その正体が少し言語化されること。数字に振り回される苦しさも、そこで働く人の必死さも、どちらも切り捨てられていないのが池井戸作品らしいところです。 こんな人に刺さると思います。自分の仕事上の判断に、時々「これでよかったんだっけ」と立ち止まってしまう人。物語としても読みやすいので、気持ちの整理にも少し寄り添ってくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの44%が集中しています。
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