
犠牲 わが息子・脳死の11日
柳田邦男
文藝春秋 / 1999-06-10
この本について
日常のどこかで、「人の苦しみって、どこまで他人がわかるんだろう」と考えてしまうことがあります。正しさや合理性だけでは腹に落ちないことが多くて、説明はつくのに気持ちがついてこない。誰かの“死”や“喪失”に向き合うときは、特にそのズレが大きくなる気がします。 『犠牲 わが息子・脳死の11日』は、そのズレをごまかさずに見つめた記録です。医学的な理解と、家族としての実感がどうしても一致しないこと。説明としては正しい言葉も、目の前の“温もりのある身体”を見ると揺らいでしまうこと。抜粋を見ていると、多くの読者が刺さっているのは「言葉にしきれない部分を、それでも何とか物語ろうとしている姿勢」なんだと思います。誰かの最期に立ち会うと、何が起きたのかだけじゃなく、“なぜそうなったのか”を自分なりに物語らないと受け止められない。その過程が丁寧に書かれているので、読みながら自分の中の未処理の感情にも少し手が届く感じがあります。 そして、この本が静かに効いてくるのは、急がず、白黒つけず、「わからないままそばにいる」という態度の重さを教えてくれるところです。死や喪失に向き合うとき、正解よりも“時間”が必要で、その時間をどう過ごすかが人を支えるという視点は、じわっと後に残ります。 こんな本が刺さるのは、「大切な人の苦しみや最期を、単なる“医学的な出来事”として処理できなかった人」。自分の中の揺らぎを抱えたまま読み進められる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの24%が集中しています。
読書の順序
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