
オペラ座の怪人 (光文社古典新訳文庫)
ガストン・ルルー、平岡 敦
KADOKAWA / 2019-01-18
この本について
仕事でも日常でも、「どうしてこんなに状況がつかめないんだろう」とか、「人の本音が読めなくて踏み込み方を間違える」とか、そんなモヤモヤが続く時があります。目に見える表情や言葉だけで判断しようとすると、余計に迷路に入り込む感じがするんですよね。 『オペラ座の怪人』を読み返していて思ったのは、人って“表に出ている姿”と“内側で動いているもの”がこんなにも違うのか、ということでした。噂ばかりが先行して、誰も実像を確かめようとしない空気。目撃したと言いながら、みんな違うことを言う場面。好奇心と恐れが混ざって、真実がどんどん歪んでいく感じ。そのあたりに反応して抜粋を保存している人が多いのも納得で、「見えているものだけを信じると、大事なことを見落とすよ」というメッセージに近いものを受け取ったんだと思います。 さらに物語の核心に近づくほど、“怪人”そのものより、彼をどう見るかで周囲の行動が変わっていくのが印象的でした。調査者が資料片手にオペラ座を歩き回る描写なんてまさにそうで、恐ろしくもありながら、曖昧な情報に振り回される人間そのものが描かれている。人との距離感に迷っている時ほど、この視点は妙に効きます。 こういう物語が刺さるのは、「他人の本音も、自分の感情もつかみにくいまま頑張ってる人」なんじゃないかなと思います。恋愛の場面で出てくる“愛してくれれば変われる”という歪んだ願いも、極端ではあるけれど、どこか人の弱さとして理解できてしまう。フィクションなのに、人間の薄暗い部分に光を当ててくれる一冊です。
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