
GOTH 夜の章 (角川文庫)
乙 一
この本について
日々、なんとなく人の感情の裏側が読めないまま過ぎていくことってありませんか。相手の沈黙や、ちょっとした動きの意味がつかめなくて、自分だけ地面の下に広がる暗い空洞を覗きこんでいるような感覚になることがあると思います。僕自身、他人の心に入り込みすぎるのも怖いし、かといって無関心でいる自分にも後ろめたさがある……そんな揺れを抱えたまま過ごしていました。 『GOTH 夜の章』を読んだとき、保存されている抜粋のような「温度のない観察」の描写が妙に刺さったんですよね。ばらばらの遺体を探すには広すぎる場所や、濡れた服の意味にだけ静かに反応する視線。「彼女の様子に関心がなかった」という一文は、残酷というより、他人との距離の取り方が壊れているときの感覚に近い。人の気配が遠のき、情報だけがむき出しに届いてくるようなあの感じです。 この小説が効くのは、無感情に見える行動の裏で、実は何かを必死に感じとろうとしている自分に気づかせてくれるところです。登場人物の冷たさは単なる“異常さ”ではなく、心が壊れないように張った防御のようにも見えてくる。物語を追いながら、自分の中にある「他人との距離への戸惑い」が少し輪郭を持ってくるはずです。また、事件の不気味さよりも、淡々とした視点の揺らぎが続くので、読後に妙な静けさが残る。その静けさが、自分の感受性の位置を確かめるきっかけになると思います。 人の裏側にある暗さを、恐さよりも静けさとして受け止めたい人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの83%が集中しています。
読書の順序
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