
ワセダ大学小説教室 書く前に読もう超明解文学史 (集英社文庫)
三田誠広
この本について
小説を書きたいと思っているのに、そもそも「小説って何なんだろう?」という根っこの部分になると、途端に手が止まることってありませんか。テクニックの本を読んでも、型だけ覚えて中身が伴わない感じがして、どこか落ち着かない。僕もずっとその違和感を抱えたまま書いていました。 この本が面白いのは、技法より前に「書く前に、人間と歴史をどう見るか」を徹底して扱ってくれるところです。中国の噂話から始まった小説という言葉のルーツや、明治の中野に広がっていた森林の話、戦後の学生たちの心情まで、時代ごとの“人間の感じ方”を丁寧に追っていく。読んでいるうちに、小説って特別な才能よりも、人がどう生き、どう揺れてきたかを自分の目で見ようとする姿勢から生まれるんだな、と静かに腑に落ちました。私小説の自己言及がどこで奇妙さを帯びるのか、リアリズムとは何を指すのか、といった論点も、実例付きで整理されていきます。 特に刺さったのは、「書き手の私と読み手の私が出会う場所が小説だ」という指摘です。だからテーマを探す前に、自分自身やいまの社会に向き合うことが避けて通れない。技巧に逃げたくなる時期ほど、この視点に戻る必要があるんだと感じました。 書く動機がぼやけている人、歴史や文学史が“遠い話”のままになっている人ほど、この本は静かに効いてきます。作り方の前に、自分がどこに立っているのか確かめたい時にちょうどいい一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
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