
霧越邸殺人事件(上)<完全改訂版> (角川文庫)
綾辻 行人
KADOKAWA / 2014-03
この本について
日常の中で、理由は説明しづらいのに「なんとなく気になる」「どうにも腑に落ちない」という瞬間ってありますよね。仕事でも人間関係でも、表向きは筋が通っているようで、自分の中だけモヤッと残るあの感じ。頭で整理しようとすると余計に混乱して、「結局これは自分の感じ方の問題なのか、世界側の問題なのか」がわからなくなることがあります。 『霧越邸殺人事件(上)』の抜粋を読むと、まさにその“世界の見え方”がテーマの一つとして顔を出します。観測には必ず自分が入り込むという話や、私たちが当たり前のように依って立っているパラダイムの存在。こういう視点を挟まれると、ミステリを読んでいるはずなのに、自分の認識のクセまで浮き上がってくるような感覚があります。曖昧な説明を「まあそんなもんか」と受け入れてしまう自分も、何かの“作用”を受けているだけかもしれない、と。 そして物語の舞台となる霧越邸の描写。建物そのものが祈っているように感じられる場面は、合理性では説明しきれない世界の“もう一面”を静かに突きつけてきます。理屈では動かないのに、どこか納得させられてしまうあの感触。自分の中の「正しい見え方」へのこだわりがほぐれる瞬間でもあります。 思考が固まってきたと感じる人や、合理で割り切れない感覚を抱えたまま進んでいる人に刺さる一冊だと思います。ミステリとしての面白さはそのままに、認識の“揺れ”を受け止める余白を与えてくれる作品です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
読書の順序
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