
十角館の殺人〈新装改訂版〉 「館」シリーズ (講談社文庫)
綾辻行人
講談社 / 202108
累計読者数84
平均ハイライト数 6.1件/人
star総合評価 50/100
start序盤集中型
check_circle推定完走率 21%
この本について
仕事でも日常でも、目の前の出来事をどう読めばいいのか分からなくなる時があります。情報はあるのに、つながらない。どこかに違和感はあるのに、形にできない。そんな“引っかかり”をごまかしたまま進んでしまうこと、僕もよくあります。 『十角館の殺人』を読むと、その感覚が少し変わるんですよね。登場人物たちが「何か見落としている」「思い出さなければいけない何かがある」と手探りで進む姿が、自分の迷いと地続きに感じられる。特に、掃き清められた地面を前に「誰かがいたんだよ」と静かに告げる場面のように、ごく小さな違和感こそ本質へ近づくヒントになるという視点は、現実にもそのまま持ち帰れるものでした。 もうひとつ、彼らが“去年起きた出来事をもう一度考え直す”という動きも印象的でした。記憶は曖昧で、都合よく混ざったり抜けたりする。でも、それでも過去を丁寧に見返すことでようやく見えてくる輪郭がある。読み進めるうちに、自分が無意識に棚上げしてきた事柄にも向き合いたくなる、そんな効果があります。 物語としての仕掛けはもちろん抜群ですが、それ以上に「違和感をそのままにしない」「記憶の曖昧さごと考え直す」という姿勢が静かに染みてくる一冊でした。細部に宿る気配を拾う感覚を取り戻したい人に、特に刺さると思います。
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