
体育館の殺人 〈裏染天馬〉シリーズ (創元推理文庫)
青崎 有吾
この本について
日々仕事をしていると、情報を追うことに精一杯で、自分の「考える力」がどれくらい鈍っているのか分からなくなるときがあります。見えているつもりのものを見落としていたり、判断を人任せにしてしまったり。そんな自分に少しモヤッとする人は多いんじゃないでしょうか。 『体育館の殺人』を読むと、その感覚が静かに刺激されます。読者が保存している抜粋を見ると、細かな語彙や、アリバイの時間のズレ、ステージの構造など、「一つひとつの情報をどう扱うか」に反応しているのがよく分かります。物語の中では、生徒たちの些細な言動や、舞台袖の位置、照明の操作といった“見過ごしやすいポイント”が積み上がっていきます。読みながら、自分も登場人物と同じように状況を反芻してしまうし、「さっきのあれってどういう意味だったんだろう」と自然と立ち止まる。これは事件そのものよりも、「観察し直す感覚」を取り戻させてくれるところが効くんだと思います。 もう一つよかったのは、語彙の豊かさが無理なく物語のリズムに入り込んでいるところです。たおやか、精悍、迂遠、才気煥発…。難しい言葉を振りかざしているわけじゃなく、登場人物の性格や状況にしっくり馴染んでいて、読みながら感覚が少し研ぎ澄まされるような心地があります。 丁寧にものごとを見直す時間がほしい人、忙しさで思考が平板になってきたと感じる人には特に刺さると思います。物語を追いながら、自然と自分の「観る姿勢」も整うような一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
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