
この本について
仕事や家のことをこなしながら、生きているだけでいっぱいいっぱいの日ってありますよね。頭が散らかって、考えたいことからもつい目をそらしてしまう。そんなときに限って、物事のつじつまが合わない感じがじわっと残ったりします。自分の中で「何かが引っかかっているのに、言語化できない」あのモヤモヤです。 『図書館の殺人』を読んでいて感じたのは、そのモヤモヤにちょっと風が通るような視点がもらえることでした。とくに、読者が保存していた場面は、図書館の静けさの中に小さな違和感が次々と置かれていく瞬間ばかり。本が寝かせて置かれている角度や、赤いシールの意味、カーペットの染み、乾ききったアップルサイダー。どれも大きな謎ではないけれど、「なぜ?」と立ち止まるきっかけになる細部です。それを、裏染天馬が一つずつ拾い上げていく流れを追っていると、自分の生活の中でも、見落としている小さなサインに目を向けてみたくなるんですよね。 もう一つ好きだったのは、登場人物それぞれが“完全じゃない”ところ。母親が息子を守ろうとして暴走してしまう描写や、思い込みで状況を誤解してしまう場面は、痛いほど人間的で、事件そのものよりも「人が追い詰められると何が起きるのか」のほうに気持ちが引っ張られました。推理小説なんだけど、人生のほころびみたいなものが丁寧に置かれている感じがします。 静かな場所で起きる違和感を最後まで追いかけたい人、自分の生活でも“見えていない何か”を拾い直したくなるタイプの人には、とても刺さると思います。
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