
この本について
年齢や立場が変わってくると、昔よりも人の視線や評価が重く感じたり、逆に自分が何を拠り所にすればいいのか分からなくなる時ってありますよね。若い頃は勢いで流せたことも、今は妙に引っかかる。誰かに期待されるのも苦しいし、期待されないのも苦しい。そのあたりのモヤモヤを抱えて生きている人、多いと思います。 『十二単衣を着た悪魔』は、平安の物語に紛れ込んだ主人公が、権力や嫉妬や老いといった生々しい現実に正面からぶつけられる話です。読者が保存していた部分を見る限り、「人は老いるから立場に執着しない」「毒も薬も飲めない不器用さ」「亡くなった人をこちらから思い出すことで保たれる関係」など、きれいごとでは片づけない感情の揺れに刺さっていたように思います。特に、時代に追い抜かれる側の視点や、人を失った後にどう生き直すかという描写は、今の私たちの生活にそのまま重ねられるところが多いです。 この物語が効いてくるのは、まず「変わりゆくものを受け入れるための角度」を静かにくれるところです。若い者に負けていい、噂はすぐに消える、そういう言葉がだれかの上から目線ではなく、負ける痛みを知っている人の実感として語られる。次に、「自分の弱さや不器用さを隠さなくていい」と思わせてくれるところ。毒も薬も飲めないと嘆く人物を、物語は切り捨てません。最後に、「喪失を忘れようとするのではなく、自分から想い出すという行為」に救いがあるという視点。これは、日々を淡々と続けている人にこそ響くはずです。 立場や年齢に振り回されて、自分がどこに立っているのか分からなくなる瞬間がある人に、じわっと効く一冊です。
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