
しょうがの味は熱い (文春文庫)
綿矢りさ
文藝春秋 / 2015-05-10
この本について
恋人と一緒にいるのに、同じ場所に立っている感じがしないときってありますよね。結婚をめぐる温度差や、相手の癖ひとつに揺さぶられたり、好きなのに噛み合わない会話に疲れてしまったり。大きな問題じゃないはずなのに、じわじわ心を侵食していくあの感じ。自分だけが不器用なのか、と不安にもなるし、どこまで合わせていいのかも分からない。 『しょうがの味は熱い』は、その「どうしてこうなるんだろう」という視界のぼやけを、日常の細部から静かに整えてくれる小説でした。二人の考え方はどちらも間違っていないのに、決定的に重ならない。そこを作者は、ドラマチックにせず、台所の匂いやシーツの感触、夜の川の光みたいな“生活の現実”を通して描いていきます。読んでいると、すれ違いの正体が大げさな運命ではなく、言葉にならなかった気配や癖の積み重ねなのだと腑に落ちてくるんです。相手の秩序を守ろうと必死になってしまう側の息苦しさと、守られる側の幼さが同時に見えてしまうのも切なくて、妙にリアルでした。 恋愛に自信を持ちたいというより、「この揺れをどう扱えばいいのか知りたい」という人に刺さると思います。読み終わるころには、関係を続けるかどうかの答えが出るというより、いま目の前にいる相手と自分をもう少し丁寧に観察してみよう、そんな落ち着きが返ってくる物語でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの30%が集中しています。
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