
黒部の太陽
木本正次
信濃毎日新聞社 / 2024-07-10
この本について
仕事でも人生でも、責任の重さに押しつぶされそうになって、「これ以上どう踏ん張ればいいんだろう」と立ち止まることがあります。周りの期待や、自分の役目をどう受け止めればいいのか分からなくなるあの感じです。私自身もそこでよく迷ってしまうのですが、『黒部の太陽』を読むと、その迷いに少しだけ風が通るような感覚がありました。 この本に出てくる人たちは、誰も“特別に強い人”ではありません。足を失うかもしれない大怪我をしても仲間や工事全体を気遣う大熊の判断や、「やけくそでもやりきる」と腹を決める瞬間、そして社長自ら危険な切羽まで入り、現場の一人ひとりに声をかけていく太田垣の姿勢。どれも派手ではないのに、現場の空気を確実に変えていく小さな行動です。読んでいて胸の奥のほうを静かにつかまれます。 私がとくに効いたのは、「責任は背負おうと思って背負えるものではなくて、周りと一緒に少しずつ形になる」という視点でした。鋲が一本から無数に増えていく描写や、戦争や不景気に翻弄されながらも工事が前に進む過程は、個人の意志だけでは届かない領域で、人がどう踏ん張るかを教えてくれます。困難の真っ只中にいると、つい“自分だけで何とかしなきゃ”と思いがちですが、ここに描かれているのは、そうではない踏ん張り方でした。 状況が厳しいほど、言葉ではなく態度が場を支えていく。その静かな重さを受け止められる人には、この本はかなり刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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