
怒り (下) (中公文庫)
吉田修一
PHP研究所 / 2011-05-22
この本について
人と関わる中で、「大事にしたいものが多すぎて、自分でも優先順位が分からなくなる」という時期ってありますよね。誰かに心を寄せれば寄せるほど、逆に今まで大切にしてきたものが揺らぐ感じがして、どこか落ち着かない。守りたいものが増えるほど豊かになるはずなのに、実際はそうでもなくて戸惑う…そんなモヤモヤに覚えがある人は多いと思います。 吉田修一さんの『怒り(下)』の抜粋で「大切なものは増えるのではなく、減っていく」という一行に読者が反応していたのは、おそらくこの感覚が言語化されていたからだと思うんです。人を選ぶということは、同時に何かを手放すことでもある。その“減っていく痛み”を物語として突きつけてくるので、読みながら自分自身の人間関係の輪郭が少しクリアになる感じがあります。 物語そのものはサスペンスの形をしていますが、効くポイントはもっと日常的で、例えば「自分は誰を本当に信じたいのか」「あの人を守るために、自分はどこまで差し出せるのか」といった問いが、キャラクターたちの選択を通して自然に浮かび上がってくるところです。読み進めるほど、自分の価値観のクセや、信じることへの不安が可視化されていく感覚がありました。物語に没入しているだけなのに、気づけば自分の人間関係の厚みや脆さを静かに見つめ直している、そんな読後感に近いです。 人との距離感でよく迷う人や、誰かを大切にするとはどういうことかを立ち止まって考えたい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
読書の順序
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