
コルヌトピア (早川書房)
津久井 五月
早川書房 / 2020-06
この本について
仕事でも日常でも、「どこに立って考えればいいのか」が分からなくなる時があります。システムとしての都市や組織の中で、自分の思考だけが噛み合っていないような感覚。効率や合理だけでは説明できない “居場所のなさ” に、妙な底冷えを覚えることもあります。 『コルヌトピア』を読んでいて強く感じたのは、そういうモヤモヤに対して、この物語がいきなり答えをくれるわけではないけれど、別の角度から考える余白を与えてくれるということでした。ランドスケープに身を置く主人公の時間感覚が変わっていく描写や、都市の縁で思考がほどけていく場面は、自分の思考の“形”そのものを見直すきっかけになります。そして作中で語られる「庭園という思考方法」は、効率や必然ではなく、人と環境のあいだに生まれる関係をどう扱うかという話として、日々の働き方や人との距離感にそのまま引き寄せられるんですよね。 もうひとつ、この本が quietly 効いてくるのは、「場所そのものが思考のモードを変える」という視点です。自分の考え方が環境から影響されるのは知識としては分かっていても、実際にどのように影響を受けるのかまでは意識しづらい。この物語では、植物と人間、都市と緑地、技術と倫理が混ざり合うことで、その“変化の仕方”が具体的に立ち上がってきます。 静かだけれど深く染みてくる小説です。都市の中で自分の輪郭がぼやけている気がする人に、とくに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
読書の順序
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