
QJKJQ (講談社文庫)
佐藤究
講談社 / 2016-08-08
この本について
最近、何かがおかしい気がするのに言葉にできないまま、いつも通りの生活を続けてしまうことがありませんか。慣れてしまえば平気なふりができるけれど、その裏で自分の感覚がどこまで信じられるのか不安になる瞬間がある。自分の中の「現実」と「物語」の境目が、じわじわ曖昧になっていくような感覚です。 『QJKJQ』を読んでいて、読者が抜き出した部分にもそのざわつきがよく出ていました。人間が平気で高速移動に慣れてしまう話や、記憶の空白を勝手に埋めようとする心のクセ。どれも現実の範囲内なのに、じっと見つめると不気味なくらい揺らいでいる。物語はフィクションですが、刺さっているのは「自分の認知のほうがよほど危うい」という感触なんだと思います。 この作品が効くのは、日常の前提を揺らす仕掛けがとにかく丁寧なところです。まず、ありふれた町や人間関係の“すぐ隣”にある異常を描くので、読んでいるこちらの感覚まで引っ張られる。次に、無意識が勝手に現実を補修してしまう様子が具体的に描かれていて、自分も似たような思い込みをしていないか立ち止まらされる。さらに、犯罪や記憶の話がただの知識ではなく、物語の登場人物の生き方にしっかり結びついているので、読み終わってからもじわじわ残ります。 「自分の感覚をどこまで信じていいのか、ときどき不安になる人」には特に刺さるはずです。フィクションの形をしていながら、読み終えるころには自分の内側のほうを静かに覗きこむことになる、そんな一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
読書の順序
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