
怖い短歌 (幻冬舎新書)
倉阪鬼一郎
幻冬舎 / 2018-11-29
この本について
日常を普通にこなしているつもりでも、ふと「自分の中の黒い部分」みたいなものに触れてしまう瞬間がありませんか。人に言うほどのことじゃないし、説明もつかない。ただ、自分でも扱いに困る感情がぬるっと現れてくる。今回の『怖い短歌』の抜粋を見ていると、そういう“言葉にしづらいところ”に惹かれて保存した人が多いんだろうなと思いました。 たとえば「牛乳パックの口を開けたもう死んでもいいというくらい完璧に」みたいな、日常のささいな行為に妙な重さが宿る感じ。あるいは「校正を入れずに刷った時刻表通りに乱れ始める世界」のように、世界の綻びを自分の視界だけが先に察してしまうような違和感。こういう歌は、こちらが抱えているモヤモヤの温度にぴたりと寄り添ってきます。怖いというより、むしろ「これも人間の一部だよ」と静かに受け入れてくれるような感覚に近いです。 この本が効くのは、心を整えるとか前向きになるとか、そういうタイプの効果ではありません。もっと手前の、名付けることができずに放置してきた感覚をそっと拾い上げるような働きがあります。日常の裂け目みたいなものを、見てはいけないものとして避けるのではなく、ちゃんと「そこにあった」と認められるようになる。もうひとつは、作者の視点を借りることで、自分では触れられなかった感情を少しだけ距離を置いて眺められるようになること。これだけでも、気持ちの沈み方が変わったりします。 こういう世界に自然と手が伸びる人は、「明るさよりも正直さを求めるタイプ」に近いと思います。怖いという言葉に反応してしまうのも、たぶん無意識で“説明のつかないもの”に飢えているから。そういう人には、この本が静かに効いてきます。
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多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
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