
えーえんとくちから (ちくま文庫)
笹井宏之
パルコエンタテインメント事業部 / 2019
この本について
最近、気持ちをうまく言葉にできないまま一日が過ぎていくことが多くて、ふと立ち止まりたくなる瞬間があります。ちゃんと悩んでいるはずなのに、言語化しようとすると急に全部が平板になる、あのもどかしさです。そんなときに笹井宏之さんの短歌を読むと、説明をあきらめてもいい場所がひらく感じがありました。 たとえば「そのゆびが火であることに気づかずに世界をひとつ失くしましたね」みたいな一行は、自分でも気づかないまま何かを手放していた日の痛みに触れてくれますし、「冬空のたったひとりの理解者として雨傘をたたむ老人」には、誰にも見られない小さな優しさの尊さを思い出させられます。意味を正確に読み解くというより、自分の中のどこかでくすぶっていた感覚が「これだったのかもしれない」と静かに名乗り出てくるような体験が続きます。 そして、この本が効くのは華やかな答えを求めているときではなく、うまく言えない揺れをそのまま抱えているときでした。「切れやすい糸でむすんでおきましょう いつかくるさようならのために」のように、割り切れない関係や不安定さも前提のまま扱ってくれる言葉が多いので、自分の弱さや曖昧さが急に許される気がします。世界を見る角度が少しだけ変わって、ただの景色がやわらかく滲んで見えるのも、この本ならではでした。 刺さるのは、「気持ちをうまく言えない日が続いている人」。そんな日にそっと寄り添って、言葉の隙間で呼吸させてくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
読書の順序
この本の前に読まれた本
この本の後に読まれた本
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