
アメリカと私 (講談社文芸文庫)
江藤淳
講談社 / 2007-06-10
この本について
人と関わる時に、どこまで自分を出していいのか分からなくなることがあります。甘えてもいいのか、距離を取るべきなのか。あるいは、日本の「空気」に合わせているうちに、自分の輪郭がだんだん曖昧になっていくような感覚を覚えることもあります。私自身、環境によって自分の強さや弱さの扱われ方がまったく変わってしまうことに、ときどき戸惑います。 江藤淳の『アメリカと私』は、その戸惑いを少し別の角度から照らしてくれる本でした。アメリカ社会の「適者生存」の論理に直面したときの息苦しさと、同時にそこに奇妙にしっくりくる自分を発見してしまう瞬間。孤独が弱さではなく「前提」として扱われ、他人の好意はあくまで余剰でしかない社会。その厳しさに、むしろ救われる部分があるという感覚は、日本でうまく「馴染めない」と感じたことのある人なら、少し分かるかもしれません。 面白いのは、その苛酷な環境の中で、自分のなかの「日本らしさ」がむしろ鮮明になっていく過程です。英語で暮らすほど、自分が日本人であることを逆に意識せざるを得なくなる。季節の移り変わりに敏感になり、自然との距離がふと縮まっていく。外に出ることで、自分の原点に触れるというのは、誰にでも起こりうることだと思います。 他人に甘えにくい人、あるいは自分の居場所を探してきた人には、とくに刺さる本です。自分の「しっくりこなさ」を無理に正そうとせず、いったん外に持ち出して観察する。そのための小さな道具として読める一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの42%が集中しています。
読書の順序
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