
アルスラーン戦記15戦旗不倒 (らいとすたっふ文庫)
田中芳樹
講談社 / 20210609
この本について
仕事でも私生活でも、ぎりぎりの判断を迫られる場面ってありますよね。倒れそうなのに踏ん張らないといけなかったり、状況が動くのを待つしかなくて気持ちだけが先に疲れていったり。正しさと現実の折り合いをどうつければいいのか、私もよく迷います。 『アルスラーン戦記15 戦旗不倒』を読んでいて、読者が保存していた場面はまさにその「どう踏ん張るか」と「どう決断するか」の揺れどころに近い気がしました。追い詰められながらも意識を保つ必死さとか、国のためという建前と実利がせめぎ合う交渉の裏側とか、きれいごとでは進まない場面が容赦なく描かれています。そこに触れると、現実の私たちの迷いも「そういうものだよな」と少し落ち着いて見られるんですよね。 この巻が効いてくるのは、まず「弱っている時の判断の危うさ」を他人事として俯瞰できるところ。自分が限界に近いときほど視界が狭くなるのは誰でも同じで、その状態でどう踏みとどまるかを物語の人物を通じて考えられます。もう一つは「大義名分の作り方」を現実的に捉え直せるところ。理屈は後づけになることもあるし、誰かの権利や正当性は、状況や語り方でいかようにも変わるという、ちょっと苦いけれど役に立つ視点が得られます。 こんな人に刺さると思います。きれいごとだけでは動けない現場にいて、それでも自分の軸を失いたくない人。物語として楽しみつつ、自分の迷いを少し整理したいときに、そっと背中を押してくれる巻でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの67%が集中しています。
読書の順序
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