
江戸とアバター 私たちの内なるダイバーシティ (朝日新書)
池上 英子、田中 優子
株式会社朝日新聞出版 / 2020-03-13
この本について
気心の知れた相手と話しているときほど、なぜか自分でも嫌いな“あの感じの自分”が突然出てきて落ち込むことがあります。仕事でも家庭でも、ひとつの顔に固定されているような窮屈さを覚えることもあるし、「本当の自分ってどれなんだろう」と考えるほど、逆に視野が狭くなっていくあの感じ。僕もけっこう長くここでつまずいていました。 この本がおもしろいのは、「そもそも人は複数の自分を持っていて、それでいい」という前提から話が始まるところなんです。江戸の人びとは“連”のような小さな集まりを渡り歩きながら、場ごとに違う顔を使い分け、しかもそれを苦にしていなかった。固定されたアイデンティティではなく、関係のなかで揺れ動く自分を前提にした生き方だったと知ると、いまの私たちが抱える「一貫した人物像であらねば」という重さが少しゆるむんですよね。嫌な自分が出ても、「ああ、今日は与太郎のモードか」とワンクッション置ける感覚も、この本の魅力のひとつです。 もうひとつ刺さったのは、人とゆるくつながる場の効能です。江戸の“連”にはリーダーも上下関係もなく、多様な人が才能を持ち寄って創造していた、と書かれています。会社や家庭のように役割が固まった場所だけで生きていると、どうしても自分の幅が縮む。だからこそ、自分の外側にある小さな“別の場”を持つことで、知らないうちに内面の多様性が育つという視点はすごく現実的でした。 「本当の自分探しに疲れてしまった人」にしずかに効く一冊です。
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ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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