
准教授・高槻彰良の推察6 鏡がうつす影 (角川文庫)
澤村 御影、鈴木 次郎
KADOKAWA / 2021-05-21
この本について
仕事でも人間関係でも、「相手のために無理して笑ってしまう」ことってありませんか。平気そうに振る舞うほど、あとから自分だけが置いていかれたような気がして、なんとなく胸がざわつく。強がりが日常に溶け込んでしまうと、どこで本音を出せばいいのか分からなくなるんですよね。 『准教授・高槻彰良の推察6』の抜粋を見ていると、高槻の“笑うしかないときの笑顔”に心を持っていかれてしまいます。髪をぐしゃぐしゃとかきむしる仕草や、手の震えを隠すように微笑む場面は、強さと脆さが同居していて、読んでいる側まで息が詰まる。誰かに迷惑をかけたくなくて無茶をしてしまったり、相手を巻き込んだと思い込んで自分を責めたりする――そういう「弱さの方向性」が、とても現実的に描かれています。だからこそ、尚哉が何度も「大丈夫ですか?」と声をかけずにいられない気持ちも、妙にわかるんです。 この巻が効いてくるのは、強くあろうとして空回りしがちな人に、自分の内側を少し客観的に見るきっかけをくれるところです。誰かのために動くことと、自分をすり減らすことの境界線はぼやけやすいけれど、その曖昧さがどんな負担になるのかを、高槻と尚哉の距離感が静かに教えてくれます。そして「非日常(ハレ)」と「日常(ケ)」の対比が、このふたりの関係に潜んだ温度差をうまく照らすのも印象的でした。 強がり癖が抜けない人、つい笑ってごまかしてしまう人には特に刺さると思います。そんな自分に気づいたとき、そっと隣に置いておきたくなる一冊です。
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