
海をあげる
上間陽子
この本について
最近、人の痛みをちゃんと受け取れているのか、自分の身近な人の苦しさを聞き逃していないか…そんなモヤモヤがふっと浮かぶことがあります。誰かの話を聞きたいのに、うまく向き合えなかった日のことを思い出してしまう瞬間もあります。 『海をあげる』を読んでいて感じたのは、「聞く」という行為がこんなにも難しくて、でも確かに誰かを支える力になるんだということでした。著者自身が調査の中で「聞く耳を持っていなかった」と振り返る場面に、私もどきっとしました。あのとき気づけなかった声は、自分にもたくさんあった気がします。そしてもう一つ、本書では“食べる”“つくる”という日常の行為が、人が生き延びるための具体的な力として描かれます。悲しいことがあっても、自分のためにごはんをつくれることが、そのまま「立て直す力」になるという視点は、読みながらじわじわ効いてきました。 さらに印象的だったのは、痛みを抱える人たちが、自分なりの方法で空気をつくり、場を保とうとする姿を、著者が丁寧に受け取ろうとするところです。そこに正解不正解はなく、その人が安心できる距離感を尊重する姿勢が、一冊の中に静かに積み重なっています。 誰かの気持ちに寄り添いたいのに、自分の無力さに落ち込むことがある人。そんな人には、この本はやさしく効くと思います。読んでいるうちに「完璧じゃなくていいけど、もう少しだけ丁寧に人と向き合ってみようかな」と自然に思える、不思議な力のある本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの32%が集中しています。
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