
この本について
忙しさに追われていると、自分が何に疲れているのかさえ分からなくなる瞬間がありますよね。周りとのつながりを大事にしたいのに、どこかで「ひとりで立たなきゃ」と思い込んでしまう。そんな揺れが続くと、胸の奥に言葉にならない澱のようなものが溜まっていきます。 『香君 上』を読んだとき、まず心を掴まれたのは、木々の話でした。根でつながり、互いを支え合うからこそ生き延びられる木がある一方で、光を独り占めする木ほど孤独な立ち方をしている。これを読んだとき、自分が「強くいなきゃ」と思い過ぎたときほど、実は弱っていたことを思い出しました。そして、叫びたいのに叫べない静かな怒りの描写も、自分の中の押し込めてきた感情をそのまま言語化されたようで、読みながら少し息がゆるみました。 この物語が効くのは、壮大な冒険だからではなく、登場人物たちが自分の役割や生き方に迷いながら、それでも一歩ずつ選んでいく姿が丁寧に描かれているからだと思います。「そういう人生を歩むために生まれてきたのでは」とふとよぎる瞬間がある人にとって、主人公の揺れ方はきっと他人事に見えません。 ひとことで言うなら、これは「自分の役割を探し続ける人」に刺さる物語です。過度な励ましはなくても、読んだあとに自分の立ち位置を少しだけ肯定できる、そんな静かな力があります。
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