
火喰鳥を、喰う (角川ホラー文庫)
原 浩
KADOKAWA / 2022-11-22
この本について
ときどき、自分の中にどれくらい「生きたい」という気持ちがあるのか、ふと立ち止まってしまうことがあります。日々を淡々とこなしているつもりでも、何かに強く望んだり、逆に執着できなかったり。その差が、自分の人生をどこまで動かしているのかよくわからないまま進んでしまう。僕自身もそこがずっと曖昧なままでした。 『火喰鳥を、喰う』を読んで驚いたのは、人の思いが「匂いのように周囲に残り、場そのものを変質させる」という仮説が、ホラーでありながら妙に腑に落ちる形で描かれていたことです。生存欲求や執念がどれだけ世界に影響するのか、作中では極端な形で可視化されますが、その極端さがかえって自分の日常にもつながってくる。たとえば、何かを大事に思った瞬間の空気の変化とか、誰かの部屋に入った時の説明しづらい違和感とか。あれって本当にあるよな、と。 もう一つ刺さったのは、強い思いを持てない人間が「欠点」なのかという問いです。執着を避けて生きてきた主人公が、過去の選択を振り返らざるを得ないシーンは、たぶん自分を重ねて読む人が多い気がします。僕も、その場で踏み込めなかった経験がいくつもあって、思いの強さってどこまで自分を動かすのだろう、と考え続けました。 ホラーとしての怖さはもちろんありますが、読後に静かに残るのは「人の思いの重力って、たしかにあるよな」という感覚です。人の感情が場や関係に与える影響を考えたい人、執着や生の手触りについて一度立ち止まりたい人には特に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの32%が集中しています。
読書の順序
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