
君は医者になれない 膠原病内科医・漆原光莉と血嫌い医学生 (メディアワークス文庫)
午鳥志季
KADOKAWA / 2023-04-25
この本について
仕事でも学校でも、周りに合わせすぎて自分の本音がよく分からなくなることってありませんか。うまくやりたい気持ちはあるのに、どこかで無理をしている感覚だけが積もっていく。表向きは順調そうに見えても、内側では「これ、続けて大丈夫なんだろうか」と静かに不安が広がるあの感じです。 この作品で印象的なのは、読者の方が抜き出していた「寛解」や「阿諛追従」という言葉が象徴するように、登場人物たちが抱えている“表には見えない痛み”のあり方です。病気が完全に治るわけではなく、付き合いながら過ごしていく状態を指す「寛解」という概念は、現実の私たちにも重なります。悩みがゼロになる日は来ないけれど、それでも暮らし方は変えられるという視点が物語の端々で示されていて、無理に強くならなくてもいいのだと少し呼吸が楽になります。 また、「阿諛追従」のように、他者に合わせすぎて自分を見失っていく側面も、この本では決して断罪的に扱われません。誰かに気に入られたい気持ちや、場を荒立てたくない思いを抱えるのは自然なことだと認めたうえで、その中でどう自分の立ち位置を見つけていくかを丁寧に描いているのが魅力です。医療の現場という厳しい環境を舞台にしながらも、言葉のやり取りやちょっとした選択を通して、読者自身の生活とつながる実感をもらえます。 「他人に合わせすぎて疲れてしまう人」には特に届きやすい物語だと思います。大きな解決策を提示するタイプの本ではありませんが、登場人物たちの迷いや躊躇に寄り添いながら読んでいるうちに、自分の悩みも少しだけ輪郭がやわらかくなるような一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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