
走る道化、浮かぶ日常
九月
祥伝社 / 2023-08
この本について
何かうまく説明できない違和感を抱えたまま日々を送っていて、「自分らしさって何なんだろう」「結局どこまでが自分なんだ」と考え出すと袋小路に入りがちですよね。行事の名前にまで意味を背負わされる感じや、人から何となくキャラクターづけされてしまうあの居心地の悪さ。そこにモヤモヤしている人は多いと思います。 『走る道化、浮かぶ日常』は、そのモヤモヤを力づくで晴らすというより、むしろ「揺れていていいんだよ」と示してくれる本です。例えば、移動するたびにアイデンティティーが揺れるのは不安定だからではなく、むしろ自然なことだと語る視点。あるいは、自分らしさは探して見つけるものではなく、もうすでに持っているという指摘。どちらも、肩に入りがちな力を少し抜いてくれるし、今の自分のままで立っていていいと思える。読者が抜き取っている箇所を見ると、まさにその実感に触れた人が多いように感じます。 それに加えて、この本のいいところは、きれいごとでまとめないところです。「どこからでも切れます」が切れないマヨネーズ袋の話や、「人間」という言葉の雑な使われ方へのツッコミなど、生活の細部に潜むズレをそのまま扱う。だからこそ、アイデンティティーの話も地に足がついたまま届くし、「今このようにあること」に価値を置く視点が、現実味を持つんだと思います。 自分の「揺れ」を否定せずに持っていたい人、あるいは自分らしさという言葉に疲れてしまった人には、静かに刺さるはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
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