
遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる―
キャスリン・ペイジ・ハーデン and 青木薫
新潮社 / 20231018
この本について
ときどき、自分の力でどこまで変えられるのか分からなくなることがあります。努力とか環境とか言われても、「そもそものスタート地点って不公平じゃない?」みたいな気持ちがふっと出てくる。かといって、遺伝の話になると優生学のイヤな記憶が立ち上がってきて、触れたくない…という人も多いと思います。僕もずっとそんなモヤモヤを抱えていました。 『遺伝と平等』は、その避けたい領域に、変に煽らず真正面から光を当ててくれる本でした。まず、遺伝が行動や能力に影響するという“経験的な話”と、人間の価値を序列化する“道徳的な話”をごっちゃにしない、という整理がとても助かります。読んでいて、「遺伝の話をする=差別の肯定」ではない世界線がちゃんとあり得るんだな、と静かに腑に落ちていきました。そして、生まれの偶然に含まれるものとして遺伝的差異を見ると、社会の側にどんな責任が生まれるのかが見えてくる。特に「もっとも不遇な人に利する社会はどう作れるか」という視点は、自分の働き方や関わり方にも直結します。 遺伝を“怖い話”のままにせず、でも都合よく薄めもしない。このバランスで語ってくれる本はあまりない気がします。生まれと努力の境目で立ち止まってしまう人に、静かに効いてくる一冊です。
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