
フィールド・レコーディング入門
柳沢英輔
フィルムアート社 / 2022-04-25
この本について
ふだん街を歩いていても、気づけば視覚ばかりを使っていて、「音ってこんなに薄く扱ってたんだな…」と後からモヤっとすることがあります。景色は覚えているのに、その場の気温や空気の動き、足元のざらつきみたいなものは思い出せない。自分の感覚の偏りに気づく瞬間があるんですよね。 『フィールド・レコーディング入門』を読んで驚いたのは、録音という行為がこんなにも“その場に居ること”そのものになる、という話でした。マイクが拾う音とヘッドフォンから漏れる生音が混ざった独特の感覚とか、風に煽られないようにじっと耳を澄ませる緊張感とか、そういう身体ごとの「聴く」が丁寧に描かれています。録った音をあとでパソコンで聴くのとはまったく別物で、その瞬間の空気ごと受け取るような感覚がある。読んでいて、自分も無意識に切り捨てていた感覚がまだ残っているのかもしれないと感じました。 さらに、排水溝の奥や転がったパイプの中、樹木の内部まで、マイクの種類によって世界がまるで違う姿を見せるあたりは純粋にわくわくします。水の音を通して風景を聴くという発想も、自分の日常を少し違う角度から見られるきっかけになりました。大げさに人生が変わるとかではないけれど、耳の使い方がゆっくり更新される感覚があります。 日常の音に飽きている人や、世界の見え方を少し変えてみたい人に刺さる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの47%が集中しています。
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