
科学文明の起源―近代世界を生んだグローバルな科学の歴史
ジェイムズ ポスケット and 水谷 淳
東洋経済新報社 / 2023-12-06
この本について
ときどき、自分が学校で習ってきた「科学の歴史」が、どこか平板すぎると感じることがあります。どこで誰が何を発見した…という順番だけを追っていると、世界のつながりや、その裏にある力学がまったく見えないまま終わってしまう。でも仕事でも人生でも、背景を知らないまま知識だけつまんでも、結局うまく使いこなせないことって多いですよね。 この本は、そういうモヤモヤを丁寧にほどいてくれました。たとえば、ニュートンの物理学の影には、奴隷船での観測があったこと。中国やムガル帝国が独自に「古代の知」を再発見しようとしていたこと。植物学が経済と結びつき、貿易会社の利権争いと同時に発展していったこと。つまり科学はいつも、政治や暴力、交易のネットワークと切り離せなかった。その混ざりものとしての歴史を知ると、今の技術や研究をどう見つめるべきか、少しだけ視界が広がります。 特に刺さったのは、「科学が栄えた理由」を単一の地域や天才に回収しないところです。中国で暦が政治の道具になっていた話や、小石川植物園が輸入依存を減らすために作られたという現実的な話は、知識がどう使われてきたかを立体的に教えてくれる。抽象的な文明論ではなく、実際の人や制度の動きが見えるから、自分の仕事で何かを調べたり学んだりするときの姿勢にも戻ってくるんですよね。 歴史を「勝者の物語」ではなく、絡み合った現実として知りたい人には、かなり刺さる一冊だと思います。
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