
笑いと忘却の書 (集英社文庫)
ミラン・クンデラ、西永良成
集英社 / 2013-11-20
この本について
最近、人と話していて「ちゃんと聞いてもらえてるのかな」とか、「結局みんな、自分の話しかしないよな」と感じることが増えていて。さらに言えば、自分の中の欲望や記憶の扱い方も、なんとなく掴めないまま日々が過ぎていくことがあります。そんなモヤモヤを抱えているときに読んで、変に慰められたのがクンデラの『笑いと忘却の書』でした。 この本は、わかりやすい答えを渡してくるタイプではありません。むしろ、笑いと性、政治と記憶、といった「ぜんぶ同じテーブルには乗らない領域」をあえて並べてみせて、そこにある歪みをそのまま見せてきます。たとえば、人が「わたしもまったく同じで」と会話を奪い合う滑稽さ。忘れたい歴史が、より大きな出来事によって塗りつぶされていく連鎖。あるいは、愛と笑いのあいだにある、わずか数ミリの緊張。それらを読んでいると、自分の中でうまく言えなかった違和感に、すこし輪郭が出てくるようでした。 個人的に効いたのは、忘却についての視点です。未来に希望を託すのではなく、過去を書き換えたいという欲望こそが人を動かすのだ、という一節には、自分の「なぜこんなに昔のことを引きずるのか」の理由がうっすら説明されている気がしました。また、完璧を求めて内部へ潜ろうとしながら、結局取り逃してしまうという描写も、思い当たる場面が多すぎて苦笑しました。 刺さるのは、物事を単純化して割り切るより、矛盾や葛藤のまま抱えて生きている人だと思います。私自身まだうまく消化しきれていませんが、読後に残るざらつきごと、今の自分には必要な本でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの52%が集中しています。
読書の順序
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